up:2015.9-5

第5回 漆現在派展

 

1993.12/13-18

 

宇佐美明子
大滝敏江
荻野令子
古伏脇司
豊田正秋
登根 円
鍋島次雄
平松伸男
藤田敏彰
松島さくら子
山村慎哉
吉田美幸

 

時間という言葉からイメージされる事柄は、その時代、地域、民族性などによって大きな捉えかたの違いがあるものだと思う。現代の、わたしの良く知る国、日本。それも東京という都市におけるこの言葉の印象は、ただ“ない”ということに尽きてしまう。実際、時間という言葉は“ある”“なし”で集約されてしまうものではなく、人間個人にとって、その人が清を受けて現世に存在する“生きている”という有効性の上に成り立つ根本的意味合いとしてあってほしいものである。 一見便利に思える現代文明こそが、活きた時間、良い時間の過ごし方というものの天敵とも思われ、この文明が起因の矛盾を、また文明の力で凌駕することによって、その先に見えてくるものは果たして何なのか?気が付けば、その渦中にいる自分の存在に戸惑いを感じてしまう。 しかし、私が漆という素材を選択し、制作する理由の要因は、漆を扱うときに実感する、自然の大きな力のリズムの流れに育まれ浄化された気持ちになるところにある。文明の流れ、自然の流れ、どちらかが本来、人間にとって重要なのかは、文明人の誰しもがわかるはずである。

藤田 敏彰