漆掻

漆掻きというのはただ単に木にキズをつけて樹液を採るというだけのことではない。それぞれ状態の違う木一本一本それぞれに、経験から学んだ一番合理的な動きを考えて傷をつけてゆく。また、その木の枝の張り具合を見ながらキズをつける時期を決める、一本一本の木を見ながら、どのぐらいのキズをつけるのがよいかを決める。それは教えられることではなく、経験からの木とのやり取りで身につけてゆくもので最低でも10年ぐらいはかかるという。

漆掻きは6月から10月まで行われる。 この期間職人さんはほとんど山中で一人きりで仕事をする。 漆掻きの人たちは身の危険を察知できるように、緊張感の中で仕事をし、五感が鋭くなってゆく。

谷口さんの研ぎ澄まされたようなシャープな感じの作品は、この仕事に携わる人ならではの作品かもしれない。

 

漆掻きには体に染み込んだ水平感覚が絶対に必要だという。これがなければ決して漆を掻くことは出来ない。キズは手前が1cmぐらい下がって液が手前に流れてくるようにしなくてはならない。 しかしいつも目線の高さにあわせてキズをつけられるわけではない。 木も斜面に生えていたり、斜めに伸びていたりする。 一番合理的で、手際よく漆を集められるキズをつけてゆかなくてはならない。 出て来た漆をもたもたと集めればゴテゴテとした漆になってしまう。

キズの跡を見ればその職人さんの腕がわかるという。