「FLOATING DIVEU」


 2003年に発表した「FLOATING DIVE」という作品は、世界の中で生きる制度や、枠組みをテーマとし
て、様々な異質な要素を組み合わせ、人が世界に再び出会えるきっかけの場として機能する事を目指しま
した。
 美術とそうでないものの境界があるように、我々を取り囲んでいる環境は、常に約束事という境界線が
いくつも存在しています。ジャンルもそのひとつです。そしてそういった確立されていく合理化の狭間に
は、人間が既に制度的存在である事を多数/少数、強者/弱者としての格差を確実に物事に対して反映さ
せていきます。
 「FLOATING DIVE」というタイトルは、矛盾した言語の造語でできていますが、それは同時にジャン
ルをはじめ、対立する要素間を繋ぐ、イメージや、アイデアを集約した概念でもあります。
 実生活において、人は経済と無縁ではいられないため、実益を求めた生存から競争が生まれ、勝ち組/
負け組という対立構造が生じ、美術作家としての生存も、このサバイバルの中、常に篩にかけられている
状態です。
 現代社会とは、格差の集合体のようなものだと思います。そうだといって、時代を共に生きている人間
が、善いとか悪いとか、差別的である視点は、今に始まった事ではありません。
 今回、私は「FLOATING DIVEU」と題して、分化されたジャンルや機能を再びひとつのイメージをもっ
たシークエンス(連続体)として、作品を解釈できるように提示します。と同時に、競争と生存の激しい
現代社会から、一時の休息のフィールドとして、競技中のハーフタイムの場として、提供できたらと思っ
ています。
 そこには美術とそうでないものの境界、すなわち、「/(スラッシュ)」の両端にある世界とはいった
いどんなだったのか、有効なのか、無効なのか、審議を期待しつつも、一時の休息という観点に立った、
コミュニケーションの場を私は求めたいと思います。
                                   清岡 正彦(きよおかまさひこ)