Jun KONISHI 04.isogaya

『亜鉛』


改装中のレストランの脇に捨てられていたトタン板を鋏で切り出し、それを金で溶接して「かたち」を創り出した。さらにそこへ二つの穴を開け「身体性」を加えた。

天気の良かったあの日、その場所は、亜鉛メッキの独特な輝きで、そこだけ空間が浮いていた。一見するとそれらはまだ新品の様でもあるが、取り外しに手間取ったのか、ところどころ切り刻まれ、その鋭い端は手が触れただけでもすぐに切れそうである。しかし、公園も近く人通りの多い場所にも関わらず、それを気に懸けている人はほとんどいない。こんな物を気にしているのは私と工事現場の作業員だけらしい。いや、彼らでさえ、もうそれをただのゴミとしてしか見なしていないに違いない。そしてさっさと次の仕事に向かって行くのだ。けれども、一人で佇んでいた私には、現代社会から吐き出された無用な物達が、無言でその場の雰囲気を変え、挑発しているかの様に見えた。

 思うに、所詮私の手を通ったところでこの物達も、現代人が吐き出す無用な物に過ぎないのかもしれない。ただ、私にはそういった無用な物達にこそ、現代社会を象徴する何かが潜んでいる気配を感じる。とは言え、私は今だにその本質を見付けられないでいる。たとえ思いを巡らせたとしても、それは泡のように消えてしまうからだ。ひょっとするとそれは、現代社会そのものが何かにメッキされている所為かもしれない。ただ、その無用な物達に潜む「何か」こそが唯一、私と社会との接点に成り得る事だけは確かである。

小西 潤